妖精データベース

ドワーフ

Dwarf
ドワーフ

Illustrator : SHIZ

  • 名称 ドワーフ(Dwarf)
  • 別名 ドゥアガー、ドゥオロー、ツヴェルク
  • 分類 小さな人型の妖精
  • 生息地 土の中や洞穴、街の地下などの暗い場所
  • 特徴 長い髭と皺くちゃな顔、手先が器用
  • 体長 人間の腰丈
小さな妖精は、
いとも簡単に鉄や石を加工する

ドワーフの特徴―おヒゲが自慢な小人の妖精―

力持ちなドワーフや手先が器用なドワーフ

ドワーフは、北欧に伝わる神話にも登場する由緒ある小人の妖精だ。神話の中では、神々によって人型を与えられた小人族「ドヴェルグ(Dvergr)」として語られる彼らは、現在でも「妖精」ではなく単に「小人」と呼ばれることもある。

顔の半分を覆っているが一番のチャームポイントだが、トンガリ帽子を被っているのも特徴だ。帽子の色は、ドワーフの好みによって様々。例えば長い髭で赤い帽子を被ったドワーフは、まるでサンタクロースのように見える。

ドワーフの顔つきは、まるで皺が多いおじいちゃん。髭を蓄えているせいで細かいところは見えないが、目の周りや額には深く刻まれた皺があるのが確認されている。一方、体つきには個性がある。お腹が出た丸っこい個体もいれば、筋肉隆々のたくましいドワーフも少なくない。

トールの画像
北欧神話で活躍する雷神「トール」の持つハンマー「ミョルニル」も、ドワーフの傑作だと伝えられている。
(出典:Adobe Stock)

ドワーフは手が器用なため、生活に必要な物を手作りして過ごしている。繊細な手つきに加えて、魔法や逞しい体をもっているドワーフは疲れ知らず。重い鉄や石も軽々と運び上げ、おもちゃで遊ぶように軽快に仕事をやり遂げてしまうのだ。

ドワーフの個体によって、得意な仕事は様々。鉄を打つのが上手な個体もいれば、素晴らしい石像を制作する個体もいる。

中には小さなアクセサリを作るのを得意とするドワーフも少なくない。伝承によれば、ハンカチサイズにまで折りたためる船や百発百中の投げ槍、黄金を生み出す指輪など、摩訶不思議な道具類を作ったドワーフも存在するのだとか。どのドワーフも力強く、底知れないパワーを秘めているのだ。

村社会で暮らし、仲間とともに仕事を楽しむ

仲間と楽しむドワーフ

ドワーフたちが住んでいるのは炭鉱や洞穴、巨大な岩の中など、暗くて隠れやすい所。鬱蒼とした森の奥も、彼らの好みにぴったり。それに彼らはグループになって暮らすので、広い場所が必要だ。広大な野原に穴を掘り、ドワーフの地下都市を作り上げるグループもいるという。

最近では、使われなくなった地下鉄の駅や線路に少し手を加えて、住処にしているドワーフたちも増えてきたようだ。

土や石、地下など「大地」のイメージと結び付けられやすいドワーフだが、意外なことに湖や海との相性も悪くはない。カナダ北東部のバフィン島で暮らすドワーフたちの住処は海中にあると伝わっているし、遥か昔のドワーフの中には魚に変身できる者もいたという。

バフィン島の画像
ドワーフの生息地は海中にも及ぶ。イヌイットの故郷として知られる「バフィン島」は、海に暮らすドワーフが出没すると言われる。
(出典:Adobe Stock)

ドワーフは村社会で暮らす妖精だ。ドワーフみんなで力を合わせて村を立ち上げ、全て自前で調達してしまう。住処が壊れたら自力で直すし、嵐が来そうなら堤防を作ったり家の補強をしたりして準備する。材料の調達をしに人間の近くに現れることはあるが、基本的には自分たちだけで生活できる自立した妖精なのだ。

彼らは陽気で仕事好き。毎日仲間と一緒に鉄を叩いたり石を加工したり、仕事中も楽しむことを忘れない。仕事が終わると仲間と共にご飯を食べて、歌って踊っている。ドワーフが歌ったり宴を催したりしている様子は映画や童話、漫画でも取り扱われたことがあるので、どんな雰囲気か知っている人もいるだろう。

人間の技術をひそかに調査!勤勉なドワーフたち

勤勉なドワーフは人間の技術を調べるために、たまにこっそりと人の住む町までやって来る。しかし、彼らの姿を見かけたという者は数少ない。

ドワーフたちは人に姿を見られることをあまり好まないため、私たちのそばに来る時には姿を消せるマントや帽子、指輪などを身に着けていることがほとんどだからだ。

なお、仕事への向上心が高いドワーフたちの中には、ものづくりが自分よりも上手な人間に対して嫉妬心を燃やす個体もいるようだ。うらやましいほどの技術や器用さを持つ人間に出会うと、彼らはひそかにその人の仕事の邪魔をしたり、夜中に部屋を散らかしたりして作業に集中できなくさせる。

「今日はなんだか仕事がはかどらないな」と思ったら、可愛らしい嫉妬をしたドワーフに付きまとわれているのかも。もしもあなたの仕事振りにやきもちを焼いたドワーフにいたずらをされても、それはドワーフが能力を評価してくれた印。だから、あまり怒らずポジティブに受け取るようにしよう。

一方、ドワーフが人間の仕事場からこっそりと道具を借りていく姿も確認されている。もちろんきちんと返してくれるし、返す際にはその道具に魔法をかけて、人間が使いやすいようにしてくれる。優しくて礼儀正しい心の持ち主も多いのだ。

Column

文武両道のドワーフ

白雪姫の画像
童話『白雪姫』に登場する「7人の小人」もドワーフだ。白雪姫もまた、ドワーフに会えた運の良いひとりなのだ。
(出典:Adobe Stock)

仕事熱心で向上心に満ちたドワーフは、休みの日も本を読んだり仲間同士で情報交換をしたりして過ごすのが好きらしい。さらに長老がお話会を開いて、若いドワーフに世界の様々な掟や、妖精の世界の事、人間との付き合い方についてレクチャーするのも習慣になっている。

ドワーフ村の長老は何百年も生きているため、いろいろな知識や知恵を蓄えているという。最近では200歳になった長老の生誕祭がドワーフの村で開かれ、親しい人間も数人呼ばれたという噂がある。

私たちの中には、実はドワーフに会える人もいる。長生きで知識も豊富なドワーフは、人間が悩みがちな未来のことを占ってくれたり、人生の進むべき道を示したりしてくれる。

妖精に会えるのは、とっても運がいい人だけだ。でも本当に助けが必要な人の前には、ドワーフ村へと続く入り口が自ずと現れる。助言を望むなら、心の整理をしながら小さなドアが開くのを待とう。

Tips

人間よりも長い時を生きるドワーフたち。しかし、その体の成長は驚くほど早い。
6~7歳のドワーフでも立派な髭を蓄えており、大人のドワーフと見分けるのは困難。さらに彼らは、大人に負けないほどパワフルだ。

― 関連書籍 ―

  • エドゥアール・ブラゼー著/松平俊久監修(2015)『西洋異形大全』― グラフィック社
  • ポール・ジョンソン著/藤田優里子訳(2010)『リトル・ピープル』― 創元社
  • 水木しげる(1996)『カラー版 妖精画談』― 岩波新書
  • 草野巧著/シブヤユウジ画(1999)『妖精』― 新紀元社
  • 新紀元社編集/シブヤユウジ画(2016)『幻想由来辞典』― 新紀元社
  • トニー・アラン著/上原ゆうこ訳(2009)『ヴィジュアル版 世界幻想動物百科』― 原書房
  • 池上良太(2007)『図解北欧神話』― 新紀元社

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