妖精データベース

シルフ

sylph
シルフ

Illustrator : sirotae

  • 名称 シルフ(Sylph)
  • 分類 風を操る四大精霊
  • 生息地 屋根や塔の上、山の頂上など
  • 特徴 宙を縦横無尽に飛び回る、風を自在に操る
  • 体長 人間の子供と同じくらい
彼女は優雅に空を舞い、
風の中で歌うのだ

シルフとは―風を司る四大妖精―

シルフは 清らかな風の妖精。姿かたちは人間に似ていて、背丈は手のひらに乗るような小さな個体から、人間の子供と同じくらいの個体まで様々だ。ご存知のとおり、ほとんどのシルフは美しい女性の姿。

しかし、男性のシルフもごく稀に存在しているのだ。もしも男性のシルフに出会えたら、その人はとても運がいい。

男性のシルフのイメージ画像
男性のシルフのイメージ図。
(出典:Adobe Stock)

羽を隠している、あるいは羽を持たないシルフもいるが、羽のあるシルフと同じく自由自在に宙を舞うことができる。小さなシルフはいたずら好きなピクシーとよく似ているので、間違わないように注意深く観察しよう。

ちなみに、四大精霊という言葉を聞いたことがあるだろうか。古代ギリシャ哲学が唱えた世界の元素で、水、地、火、そして風のこと。これらの要素無くして自然環境は保てないほど、大切な元素と言われている。シルフは風の精として、四大精霊の一翼を担っているのだ。

シルフは意外と気まぐれな一面も

シルフは優しくて穏やかなイメージだが、時として災いをもたらすこともある。この美しい妖精を捕まえて、自分の召使いにしようと企む悪魔たちもいるのだ。

残念ながら、シルフの純粋さが裏目に出ると、悪魔の使いになってしまうことがある。特に、困っているところを助けられたシルフは、悪魔の頼みを断れない。暴風が吹き荒れたり船が難破したりするのは、誰かがシルフの風を操る力を悪用しているせいだと言われている。

しかし、ご心配なく。突然の嵐が過ぎ去った後には、すがすがしい晴天と心地よい風が戻ってくるのを感じられることだろう。目まぐるしく移り変わる天候は、風のように気まぐれなシルフの性格ゆえかもしれない。

風を司る妖精シルフの能力がよく描かれているのが、ウィリアム・シェイクスピアの手掛けた戯曲『テンペスト(The Tempest/邦題:あらし)』だ。作中ではエアリアルと呼ばれるシルフが、魔術師に自由を封じられた「使い魔」として登場する。彼女は、ある企みを秘めた主人の命令に従って大嵐を起こし、王を乗せた巨大な船をいともたやすく難破させてしまう。しかも、難破船に乗っていた人々が傷を負わないように、船が島に漂着するようにと、風の強さや向きを自在にコントロールしてみせるのだ。

シルフとの出会い方

何人もの人が、美しいシルフを一目見ようと様々な場所を訪れた。シルフが住むのは空気が澄んだ高い場所。例えば屋根の上や教会の塔、山の頂上などは、シルフが好む場所だ。しかし、やっとの思いで高い所へ登っても、この美しい妖精が見られると約束されているわけではない。なぜなら、シルフは風だから。実はシルフは、最も目撃情報が少ない妖精の一つなのだ。

見つけづらいシルフを探すには、耳を傾けるのがおすすめだ。人懐こいシルフは 「ヒュルリンヒュルリン」という歌声で、近くにいることを知らせてくれる。例えば「ヒュー」という風音を聞いたことがあるかもしれないが、それは宙を舞う時のシルフの歌声だったのだ。

また、木の葉や鳥の羽にそっくりな形の雲を見かけたら、シルフが傍にいるサイン。シルフたちは、雲の形を自分の好きなものや、馴染み深いものの姿に作り変えて遊んでいることが多いのだ。

ちなみに、めったに人前に姿を見せないシルフにも、こんな言い伝えがある。「人と出会い、人の心に触れたシルフがその人間と結婚すると、不滅の魂を得る」。つまり、若く美しい姿のままで、永遠の時を過ごす存在となるのだ。

人に恋した妖精といえば水の妖精であるウンディーネが有名だが、シルフにも同じ例があるらしい。どちらかといえばウンディーネよりもシルフの方が、人間に恋心を抱くケースが多いともいわれている。風のように自由なシルフの愛の前では、妖精と人間という種族の違いは些細な問題なのだ。

ただし、シルフと添い遂げようとする人間は、「生涯をかけてシルフだけを愛し、決して浮気心を起こさない」と誓わなければならない。もしも誓いを破れば、シルフはその者の前から永久に姿を消してしまうだろう。純粋なシルフは、伴侶の心変わりという裏切りに耐えられないのだ。

Column

身近にあるシルフの名前~風の妖精はダンスも上手!~

アオフタオハチドリの画像
美しい姿のアオフタオハチドリは英語で「long-tailed-sylph」と名付けられている。
(出典:Adobe Stock)

可憐で美しい妖精のイメージから、世界にはシルフやシルフィードと愛称が付けられたものが多い。

特に、バレエ・ダンスの世界で人気のようだ。一流ダンサーが舞台上を軽々と飛び跳ねたり優雅にくるくると回転したりする様子は、まさしく風の妖精を彷彿させるとして、彼ら、彼女らをシルフと呼ぶこともしばしばだ。

バレエ作品の中では、『ラ・シルフィード(La Sylphide)』という演目が名作として有名だ。タイトルのとおり、妖精のシルフを題材にした作品で、つま先立ち(ポワント)で宙を舞うように踊るシルフィード(シルフ)役のプリマは、この妖精の魅力を印象的に伝えてくれる。

『ラ・シルフィード』は19世紀に生まれた作品で、今や日本でもたびたび上演されている。スコットランドの農村を舞台に繰り広げられる、妖精と青年の儚くも美しい恋物語に心を揺さぶられながら、舞台上で踊るシルフを間近で見られるだろう。

さらには、柔らかくて解放的な風のイメージから、「軽快で、疾風のように素早くあってほしい」という願いを込めて、例えばレストランや、乗り物であれば鉄道や車に始まり、はたまた競走馬や戦闘機まで。シルフやシルフィード、シルフィなんて愛称で親しまれている。

シルフの名は今や、風のように世界中を駆け巡っているのだ。

Tips

エアリアルは「Ariel」と書き、アリエルとも読む。
同名の空気の精霊が誌『髪盗人』に登場する他、過去に軽量さを謳ったオートバイメーカーがこの名を冠している。

― 関連書籍 ―

  • エドゥアール・ブラゼー著/松平俊久監修(2015)『西洋異形大全』- グラフィック社
  • クリエイティブ・スイート編(2010)『妖精・精霊がよくわかる本』- PHP研究所
  • ポール・ジョンソン著/藤田優里子訳(2010)『リトル・ピープル』- 創元社
  • 水木しげる『カラー版 妖精画談』(1996)- 岩波新書
  • 草野巧著/シブヤユウジ画(1999)『妖精』- 新紀元社
  • 井村君江(1993)『イギリス・妖精めぐり はじめての出会い』- 同文書院
  • キャロル・ローズ著/松村一男監訳(2014)『世界の妖精・妖怪事典』- 原書房
  • 井村君江(2008)『妖精学大全』- 東京書籍

― SNSでこの記事を
シェアする ―

このエントリーをはてなブックマークに追加